試作版の「年表」「総覧」ができました 森 章司(2018.12.4)

2018.12.04

 10月1日から11月30日までの2ヵ月間、中央学術研究所と立正佼成会の施設をお借りし、試作版「年表」「総覧」作成合宿を行いました。参加者は森章司、金子芳夫、石井照彦の3名で、計画どおり仮とじした「年表」「総覧」を作成し、無事終了しました。金子、石井両君の奮闘ぶりには研究代表者として頭が下る思いです。

 「年表」の標題は、『釈尊および釈尊教団形成史年表(検証作業のための試作版)』(全106ページ)です。
 ここに「検証」というのは、今まで「モノグラフ」に掲載してきた論文や研究ノートは釈尊の動きと釈尊教団形成史を中心に考察されたものであり、その周辺にある仏弟子たちの動きまで厳密に勘案されておりません。
 そのため例えば釈尊がある年の雨安居を舎衛城の祇樹給孤独園において過ごされ、そのとき説かれた教えのその対告衆のなかにサーリプッタがいたとして、「年表」ではこの年の雨安居をサーリプッタが王舎城で過ごしたことになっているとすると、釈尊の事績年推定か、もしくはサーリプッタの事績年推定のどちらかが誤っていることになります。あるいは聖典の記述自体に矛盾があるという可能性もあります。
 このような齟齬を見いだし再検討するというのが検証作業の主な目的です。

 「総覧」の標題は、『釈尊の生涯にそって配列した事績別原始仏教聖典総覧(シミュレート作業のための釈尊70歳から73歳までの試作版)』(全109ページ)です。これはパソコン上に構築した「総覧」編集用のシステムが所期の目標どおりに作動するかをシミュレートするために作られたものです。そして結果としてこのシステムは見事に働くことが確認できました。

 この「原始仏教聖典資料による釈尊伝の研究」は平成4年に出発しましたから、今年(平成30年)末には満27年を経過します。この間基礎研究や個別研究を行い、また資料集などを編集してその都度研究報告書として「モノグラフ」を出してきましたが、実はわれわれ自身も釈尊の全生涯と釈尊教団形成史の全体を俯瞰して見るということはできていませんでした。そして今これによって初めてこれが明らかになりました。

 これを元にしてこれからほぼ1年をかけて今までの研究結果の検証作業を行い、来年(2019年)9月までには完成版の「年表」と「総覧」を作り上げ、10月には「完成報告会」を行ってこの研究の大団円としたいと考えています。

 添付の、写真①は試作版「年表」と「総覧」、写真②は合宿作業風景で画面左から森、石井、金子です。

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