8月3日(木)に第42回「釈尊伝研究会」を行いました。5月3、4、5日の合宿研究会(この研究会の報告はしておりません)からちょうど2ヵ月ぶりの研究会でした。出席者は森章司、金子芳夫、岩井昌悟、本澤綱夫、石井照彦の研究会員全員です。いよいよこの研究も総まとめの段階に入ります。
今回の研究会では3つの資料集、すなわち、
(1)「 『律蔵・受戒犍度』を中心とした釈尊伝資料集」(担当:岩井)
(2)「 『涅槃経』を中心とした釈尊最晩年の事績資料集」(担当:本澤)
(3)「成道以前の仏伝資料集」(担当:金子)
の編集作業状況の報告と、これに関する意見交換を行いました。
この研究の最終目標は、『釈尊および釈尊教団史年表』(以下「年表」)と、『釈尊年齢にしたがって配列した原始仏教聖典目録』(以下「目録」)を刊行することです。この目標は「モノグラフ」第1号に掲載した【論文1】「『原始仏教聖典資料による釈尊伝の研究』の目的と方法論」に書いたように、26年前にこの研究が出発したときに設定したものです。
「年表」は釈尊の生涯と釈尊教団の形成史に係わる事績を、釈尊年齢にそって1年を雨安居前、雨安居中、雨安居後の3期に分けて記入します。
「目録」は、この「年表」に記入した事績を伝える漢・パの経蔵と律蔵に含まれる全データの1つ1つの記事概要を紹介します。
いわば「目録」は釈尊の生涯と釈尊教団形成史資料集のようなものであり、「年表」はその目次と言い換えてもよいでしょう。
最後に「新ゴータマ・ブッダ伝」のようなものを書いて大団円としたいと考えていますが、「年表」と「目録」自体が膨大な釈尊伝なのですから、研究としては「年表」と「目録」が最終報告ということになります。「新ゴータマ・ブッダ伝」はこれをどなたにも読んでいただけるやさしいものに編集しかえるというだけにすぎません。ただし今のところこの具体的なイメージはできておりません。
今回の研究会のテーマとした、(1)「『律蔵・受戒犍度』を中心とした釈尊伝資料集」は「目録」の釈尊の成道から46歳(十衆白四羯磨受戒法の成立)まで、(2)「『涅槃経』を中心とした釈尊最晩年の事績資料集」は「目録」の釈尊78歳(霊鷲山における不退法の説法)から入滅まで、(3)「成道以前の仏伝資料集」は「目録」の釈尊の過去世から成道直前までを先取りした元原稿というようなものになるでしょう。
これらは「仏伝経典」とよばれるいくつもの経典や、ブッダの伝記として今まで出版されてきたたくさんの書物が扱う範囲のもので、この枠外の釈尊47歳から77歳までの「年表」「目録」が、今まで皆さんがお知りになっていなかったまったく新しい仏伝になります。
(1)(2)をそれぞれ、「『律蔵・受戒犍度』を中心とした」「『涅槃経』を中心とした」と称するのは、『律蔵・受戒犍度』や『涅槃経』は仏伝として編集されたものではなく、前者は十衆白四羯磨受戒制度の形成史を、後者はサンガに残した釈尊の遺言というテーマに基づいて編集されたものですから、釈尊伝としては他の文献に記されているこのほかのたくさんの事績をここに組み込んでやらなければならないからです。これらもまたまったく新しい仏伝要素です。
まだこれらの資料集編集作業は緒についたばかりなのでさまざまな紆余曲折があるでしょうが、研究すれば分ってくると考えられることはすべて研究し尽くしたので、今はその総まとめの段階に入っているということです。