ゴールデンウイーク中の5月3日(日・憲法記念日)、4日(みどりの日)、5日(こどもの日)の2泊3日の日程で、中央学術研究所と立正佼成会の宿泊施設をお借りして、「原始仏教時代の通商・遊行ルート」をテーマとする合宿研究会を行いました。森章司、金子芳夫、岩井昌悟、本澤綱夫、石井照彦が出席し、3日には特別ゲストとして藤田浩一郎学術研究室室長が参加してくださいました。
研究会は次のようなスケジュールで進みました。
(1)今までの作業の確認(データと通商・遊行ルート地図)
(2)「通商・遊行ルートを想定するにあたっての基本的要件」の検討
(3)「通商・遊行ルートを想定するにあたっての具体的要件」の検討
(4)「インド古典に記された通商ルート」の検討
(5)「原始仏教聖典に記された通商・遊行ルート基礎データ」の検討
(6)「基礎データをもとに加工した直近2基準地点間データ」の検討
以上のうち、特に(2)(3)(4)の作業により(これらは論文の第4節・第5節・第6節になる予定です)、データをどう処理すべきかという方向性がはっきりしてきたといってよいでしょう。しかしこの合宿中に具体的なルートの検討をする時間はなく、最終的な結論を得るという目標は達成できませんでした。
データ整理の担当者は金子で、金子にはいくつかの宿題が残されましたが、大体の処理方針は固まりましたので、後の作業は金子と森が行って、最終的な結論(案)ができたところで次回の研究会を開くということになりました。
藤田氏には「釈迦族の人種に関するDNA分析」に関する報告をいただきました。前回の研究通信に書きました専門家からのレクチャーの一環です。
これによってこの研究の大体の方向が見えてきましたが、同時にこれはたいそう大掛かりな研究になりそうなことがわかり、最低限どんなことをやらなければならないのか、そのためには釈尊伝研究会という枠を超えたどのような組織にすればよいか、予算はいくらくらいかかるのか、ということをより正確に把握しなければならないということになりました。例えば、私たちは2,500年ほど前の1つの人骨サンプルを分析するにはどうするのか、その費用はどのくらいかかるのかということさえわかっておりません。そのために次回のレクチャーは分子生物学の専門家にお願いすることになりました。
また藤田氏の報告によって分子人類学という学問領域があり、日本にも専門家がおられることがわかりましたので、いずれはこの方からもお話をうかがうことになるでしょう。分子人類学の現在がわれわれの問題提起にたいして容易に解答を与えてくれるレヴェルにまで進んでいれば問題はありませんが、もしDNAによる人種あるいは民族の細かな進化系統樹などができていないとするとさらに大掛かりなものになり、とてもわれわれが扱えるものではないということになるでしょう。
写真は研究会の模様です。大きな紙面が映っていますが、これがいま私たちが作っているルート地図です。