1月28日(水)に本年度最初の「研究会」を行いました。釈尊伝研究会としては第29回目の研究会となります。今回はさまざまな課題について検討しました。
用意した議題は次のようなものでした。
(1)前回研究会記録確認
(2)報告事項
(3)「ゴータマ・ブッダとそのサンガ」の刊行について
(4)「モノグラフ」第20号(記念号)刊行について
(5)「釈迦族の人種」について
(6)各自担当の研究テーマについて
金子芳夫:「原始仏教時代の遊行・通商ルート」について
岩井昌悟:「日本の仏伝物語」について
本澤綱夫:「建造物としての重閣講堂」について
森 章司:「原始仏教聖典における高名な婆羅門たち」について
(7)次回研究会について
(8)その他
(3)については、当初はシリーズとして出版することを考えていましたが、諸般の事情でシリーズとしての出版は難しいということになり、方針を変更して、われわれの研究成果を土台にして、各自が自由に独立した本を書くことになりました。森は「ブッダの生涯とそのサンガ」という題で執筆し、金子は「辺境に布教した仏弟子たち」という題(いずれも仮題)になる予定です。
(4)については、10月上旬を目標に刊行することになりました。第20号という区切りのよい号になりますので記念号という認識のもとに、研究会の全員が執筆することになりました。
森章司と金子芳夫は共著として【論文26】「原始仏教聖典にみる釈尊と仏弟子たちの遊行ルート」を、岩井昌悟と本澤綱夫は共著として【資料集8】「ジーヴァカ資料集」を掲載します。また石井照彦は一昨年に調査旅行をした際の標高を含むGPSの計測記録と実地に見聞した記録をつき合わせて、Devadaha, Rāmagrāma, Piprahawaを含む古代の釈迦国内に点在するたくさんの仏教関係遺跡の地図とその元データを【研究ノート10】として掲載する予定です。
(5)については、文献などに頼る従来の方法では決着がつきません。そこでDNA分析を考えてみることになりました。そのためにはいくつもの乗り越えるべき難関がありますし、全員がこの方面の知識に乏しいためゼロからの出発ということになります。その地ならしを本澤が担当することになりました。
(6)については、各担当者から報告がありました。
金子については資料整理の基本方針を再確認することに終始しました。いつの間にやらこの方針に揺れが生じていたためで、1つには、原始仏教聖典に記された遊行通商ルート資料を、「誰が」「何のために」「どこを経由して」というように、情報が細部に亘って丁寧に採取してあったためにあまりに複雑になりすぎたことと、もう1つは他の仕事もあってこれに集中できず、どうしても間が空いてしまって作業が継続できないということがあったからでしょう。しかし今回の研究会ですっきりしたのではないかと思います。
岩井については、新しい文献がどんどん増えてしまって、その類型化に苦心しているようです。日本にこれほどたくさんの仏伝物語があったこと自体に驚きますが、ここには日本人ならではの日本化が行われているようであって面白い知見が得られそうです。
本澤については、今までに書物や辞書などに書かれている以上のものは得られませんでした。しかし以前の報告では重閣講堂は公会堂のような公共施設であったという結論になっていましたが、今回の報告では仏教の僧堂ということになっており、疑問はますます深まったというべきでしょう。
森については、例によって時間切れで報告できませんでした。しかし原稿はでき上がっていますので、皆さんに読んで戴いて、来月の研究会で意見をいただくことになりました。
余計なことですが、研究会終了後は例によってのご苦労さま会になりました。最近は地下鉄方南町駅そばのインドカレーの店「バラト」が定席になっています。上記報告にはその時になされた議論も含まれています。