2月定例研究会を2月27日(水)に行いました。研究員それぞれが分担している研究テーマの進捗状況は以下のとおりです。
本澤綱夫、岩井昌悟:"Buddhist monastic Life--according to the texts of the Theravāda tradition"の日本語訳作業を進めています。翻訳はほぼ終了し、現在は本文中に引用されているパーリ経・律の文章をパーリテキストで確認して、それに相当する漢訳を探す作業を行っていますが、著者であるMohan Wijayaratna氏との連絡が取れないままです。出版社にもう一度メールおよび書信を送ってみて、1月ほどの間に返事がないようなら翻訳の形式を捨てて、内容を詳しく紹介しながらわれわれの意見を述べるという形式に改めることにします。この書物のパーリ聖典の引用はかなり大ざっぱで、実はその引用が聖典のどこを指しているのかわからない箇所がかなりあります。翻訳形式を捨てれば、そういう作業をする必要がなくなるので、より早期に仕上がるかもしれません。
金子芳夫:「原始仏教時代の通商・遊行ルート」(仮題)のデータ収集が終了し、このデータを釈尊、比丘・比丘尼、その他(王、商人など)別に、2点間遊行資料、3点間遊行資料、4点間遊行資料、5点間以上の遊行資料に整理する作業を行っています。これをもとに前回の「研究会報告」でも報告しましたが、次のような手順で分析することになります。
(1)大都市(今のところ13の都市を設定している)と大都市を結ぶ遊行ルートを地図上に描いてみる(航空路のようなもの)。
(2)大都市2点間の細かな遊行ルートを地図上に描いてみる(道路地図のようなもの)。
(3)上記の遊行ルートと現在の道路地図や地形図などに重ね合わせて、非現実的なルート(例えば王舎城からウッジェーニーへの直通ルートなど)を消去する。
(4)残された遊行ルートを原始聖典の記述から検証する。
森 章司:「サンガと律蔵諸規定の形成過程」(仮題)という論文を執筆中で、今回はその第2節に当たる「具足戒の種類と名称」を報告し、意見交換しました。
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なお、調べればわかるというテーマの研究はほぼ終了しましたので、いよいよ釈尊の伝記とサンガの形成史を書いて本にする段階に近づいています。この本は一般の方にも興味をもっていただけるような、生活実感のともなうものにしたいと考えておりますが、しかし画竜点睛を欠くともいうべき肝心なイメージができ上がっていません。それは釈尊の容姿や顔立ちです。もちろん調査すればわかるというようなものではないので、われわれのイメージを明確にするという意味しかないのですが、そのために夏休み中に全員でルンビニーを中心とするその周辺の人々や暮しぶりを見ながらの、「釈迦族の人種をさぐる」をテーマとした現地合宿研究会を行うことにしました。その具体化のために、定例研究会は偶数月に行うことになっているのですが、3月にも臨時研究会を行うことになりました。