諸般の事情により半月ほど遅れましたが、11月14日(水)に釈尊伝研究会としては第12回となる10月定例研究会を行いました。
研究員が分担している研究テーマの進捗状況は以下のとおりです。
本澤綱夫、岩井昌悟:Mohan Wijayaratna著の"Buddhist Monastic Life--according to the texts of the Theravāda tradition"の日本語訳への、著者と版元からの許諾はまだいただけていませんが、作業は着実に進んでいます。今回は原註と訳者註をどのように区別するか、原著のパーリの経と律の引用にさまざまな問題が含まれており、これを訳者註においてどこまで注意・訂正すべきか、漢訳の経・律の情報をどこまで盛り込むかなどを検討しました。
金子芳夫:「原始仏教時代の通商・遊行ルート」(仮題)を論文にまとめる作業を行っています。通商・遊行ルートは2点間の移動の積み重ねということで、「原始仏教聖典の仏在処・説処一覧」を編集したときの資料をもとに2点間の移動記事をデータ処理ソフトに入力しており、その作業が8割方終りました。
このデータソフトは2点間の移動の前ルートと後ルートを合わせて、自動的に集計できるようにフォーマットしてあるので、入力作業が終れば一挙にあらゆるルートが表示されることになります。もちろんこれをもとにして細かな検討と検証作業が必要ですが、あまり知られない地名でも、それが地図上のどこに相当するかということは、「原始仏教聖典の仏在処・説処一覧」の「その他国篇」(「モノグラフ」第15号掲載 2009年10月)において相当詳しく調査してあるので、完成にはそれほど時日を必要としないでしょう。
森 章司:【研究ノート1】として進めている「釈尊と仏弟子たちの事績の年代推定」のなかから、第11節になる予定の「釈尊のアンガ国訪問年の推定」を報告し、意見をいただきました。釈尊は生涯に3度、アンガ国のチャンパーに雨安居された、(1)ソーナダンダ婆羅門を教化したとき、(2)チャンパーのガッガラー池のほとりの僧院で満月の布薩を過ごされたとき、(3)「チャンパー犍度」を説かれたとき、という推定です。この年代は「モノグラフ」第18号が発行されたときにご参照下さい。