釈尊伝研究会としては第8回目となる定例研究会を12月21日(水)に行いました。平成23年度はこれが最後となります。皆さま、よいお年をお迎えください。
研究会の内容は次のとおりです。
まず釈尊伝研究会が企画した、現在開催中の「お釈迦さまの生涯とゆかりの地」展の現況報告がありました。展示の文章中にあったいくつかの誤植を訂正したこと、「小冊子」ができ上がり希望者に配布していること、ちょうど60分に短縮したDVDを作成したこと、お借りしている釈迦弟子像の作者である文化勲章受章者の中村晋也先生と日本テーラワーダ仏教協会のスマナサーラ長老にも見ていただいたことなどです。
その後、各自が担当している研究テーマの報告を行いました。
岩井昌悟の担当は、本澤が収集した漢訳資料に、パーリ・サンスクリット資料を加えて「ジーヴァカ資料集」を作成することですが、来年の春休みに集中的に作業して、5月か6月ころに発行する予定の「モノグラフ」第17号に収録することになりました。
本澤綱夫の担当は、Mohan Wijayaratna原著、Claude GrangierとSteven Collins英訳の"Buddhist Monastic Life--according to the texts of the Theravāda tradition"(Cambridge University Press, 1991, New York)を日本語訳して、これに漢訳資料を註として付け加えたものを、これも「モノグラフ」の1冊として刊行することです。日本語訳はすでに3分の2ほどが終っていますので、これは来年度中に完成させることを目標とすることにしました。
金子芳夫の担当は、「原始仏教聖典資料の仏在処・説処一覧」の「補遺・訂正篇」の作成ですが、現時点では、釈尊伝研究会として編集・刊行を準備をしている、『パ・漢対照律蔵規定便覧』の補足作業をしています。「釈尊伝研究データベース」をパソコン上に構築するに際しては遺漏なきを期したつもりでしたが、特に『摩訶僧祇律』と『根本有部律』に落ちがあったことがわかったためです。
森章司の担当は、前回の「研究ニュース」で報告した「原始仏教聖典にみる釈尊と仏弟子たちの一日」論文の姉妹篇としての「原始仏教聖典にみる釈尊と仏弟子たちの一年」論文を執筆することです。「一日」もそうでしたが、「一年」も筆者の中ではイメージができていて、それに基づいて今までいくつもの論文を書いてきたのですが、論文として公刊して、学界の批判も受けておかなければならないと考えたからです。具体的には現在は、今まで筆者にもよく解っていなかった迦絺那衣についての調査をしています。迦絺那衣は「一年」とは間接的な関係しかないのですが、これについてはパーリ律や漢訳諸律の記述に混乱があり、律によって伝承の相違がありそうなので、それぞれが言うところを整理して、筆者の理解できた範囲のことを報告し、同時にまた疑問点や問題点を提示するという形になりそうです。