8月定例研究会報告 森 章司

2010.08.26

 8月の定例研究会を22・23・24日の3日間、合宿して行いました。主なテーマは(1)ディーガ・ニカーヤと長阿含経の説示年代、(2)聖典目録編集作業の内容と手順、でした。



(1)ディーガ・ニカーヤと長阿含経の説示年代
 ディーガ・ニカーヤと長阿含経の1つ1つの経典が、それぞれ釈尊の生涯のどの時点で 説かれたものであるかを検討しました。いうまでもなく聖典の編集者たちがその説時に関して、どのようなイメージをもっていたかということです。マッジマ・ ニカーヤと中阿含についても同じ作業を行う予定でしたが、時間切れとなったために森に一任されました。

(2)聖典目録編集作業の内容と手順
 いよいよ10月中旬から「釈尊年齢にしたがって配列した原始仏教聖典目録」の編集作 業に入ります。この具体的な内容と手順について検討しました。そのおおよそは次のようになりまりました。
①「釈尊および釈尊教団史年表」の作成
 今まで行ってきた研究、たとえば「摩訶迦葉の研究」「マハーパジャーパティー・ ゴー タミーの生涯と比丘尼サンガの形成」「提婆達多の研究」「阿難以前の侍者伝承と雨安居地伝承」「コーサンビーの仏教」「ヴィサーカー・ヴィマーラマーター 資料」や、前回の合宿研究会と今回の合宿研究会で行った「年代を確定すべき事績」「ディーガ・ニカーヤと長阿含経の説示年代」、そして森に宿題として残さ れた「未解決の年代を確定すべき事績」「マッジマ・ニカーヤと中阿含経の説示年代」などで得られた、ないしは得られるであろう知見をもとに年表を作成す る。
②「釈尊伝データ」への打ち込み
 前記「年表」に基づいて、パ・漢の経蔵と律蔵のすべてをデータとして蓄積した「釈尊 伝データ」の1点1点(A文献データ=11,817点、B文献データ=695点、C文献データ=135点)に、それが釈尊の生涯のどの時点で説かれたもの か、どの時点より以後のものか、どの時点より以前のものか、どの時点からどの時点の間のものかという情報を打ち込む。
③編集・出力・製本
 このデータをコンピュータによって釈尊の年齢にしたがってソートし、これをもとに 必要事項を抽出した書き出し原稿を作成し、これをプリントして製本する。聖典目録として書き出す事項は、釈尊の年齢と記事、その下に当該経、同時経、以後 経〜以前経、以後経、以前経、参考経という項目のもとに、それぞれに該当する聖典名とページ、聖典の概要、である。
 このように「聖典目録」は、釈尊の生涯にしたがって、聖典名とその概要が示されます から、この全体が「釈尊の伝記」を表すことになります。おそらく全体ではA4版で3,000ページほどになるのではないかと思います。
 しかし残念ながらこの「聖典目録」は、この研究を援助して下さっている立正佼成会と中央学術研究所に提出する報告書として作成するものであって、公刊することを目的とはしておりません。これからも研究を継続し、より完全なものとして、もし公刊するに耐えるものができれば、その段階で公刊することも検討したいと考えています。
 もちろんわれわれは、一般読者にも読んでいただけるようなお釈迦さまの伝記を執筆することを最終目標にしています。いよいよその時期が近づいてきたということを実感しています。