キーワード:

ヴァンギーサ 婆耆舎 ニグローダカッパ アーラヴィー アンガ国 東園鹿子母講堂


 本稿は、詩人として有名で「具弁才中の第1」「言論弁了にして疑滞なきもの」「能く偈頌を造り、如来の徳を嘆ずるものの第一」と讃えられる比丘ヴァンギーサ(VaṅgIsa 漢訳では婆耆舎、婆耆奢、多耆奢、傍耆舎と表記される。婆耆奢耶旬という訳語も見いだされるが「耶旬」が何を意味するのかはわからない)の生涯の概略を考察したものである。大まかであるとはいえ1人の比丘の生涯がトレースできるのは、Theragāthāの掉尾を飾る彼の詩集である「大いなる集成(mahā-nipāta)」や、彼が残した多くの詩のたまものである。
 本稿が検討した事項は、彼が釈尊のもとで出家し、ニグローダカッパのもとで具足戒を受けた経緯と年次、そのニグローダカッパが亡くなったため「ブッダを上首とするサンガ」に移って釈尊の内住弟子となった経緯と年次、阿羅漢果を得た年次、東園鹿子母講堂において入滅した年次などであって、末尾にこれを整理して「ヴァンギーサ略年表」を作成した。